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仏根場の伝説 ―姥捨て山考 2―



 背中から細い皺(しわ)の腕がのび、「ポキン、ポキン」と枝を折る音がします。

 不思議に思い息子が尋ねると、「お前が帰る途中、道に迷ったら困ると思い、枝を折って目印にしているのだ。」というのです。

 この、子を思う親の情を知って、(なんで、この親を捨てることなど出来ようか。領主からどんなお咎(とが)めを受けてもかまわない。)と、覚悟を決め家に戻り裏山に隠れ場を作り隠しました。

 そんなある日、領主よりえらい難題が持ち込まれました。それは、隣の本木村に出題した「灰の縄づくり」と同じように、「煙管(きせる)の羅宇(らお)(煙管の火皿と吸い口を繋ぐ竹の管)が曲がりくねっているものに、細い糸を通すことが出来るか。」という問題でした。

 しかし、誰もこれを通すことは出来ませんでした。そのことを隠し場にいる老母に相談しますと、「煙管の火皿に、蟻(あり)の好きな水飴をたらし、蟻の足に細い糸を縛り、吸い口から這(は)わせるとよい。」と教えてくれました。

 早速、糸を通した煙管を領主に見せ、今までのことを一部始終語りました。「どうぞ、年老いた母親と一緒に暮らすことをお許し下さい。褒美(ほうび)などいりません。これからは、年寄りを捨てることだけはお止め下さい。」と、涙ながらに訴えました。
 領主も、これまでの非道を改め、年寄りを大切にしたため、村に平和が戻り、豊かになったといいます。

 この姥捨て伝説は全国各地にありますが、葬送の形として遺骸(いがい)を山に捨て(埋葬)したということと関係があるといわれています。
 また話の内容は、親が畚(もっこ)に入れていくと、子がこれを持ち帰るという「畚の話」や、前の話のように、子が親を隠しておいて難題を解いてもらうという「難題話」など、いくつかの例があります。


 大曽根地区を流れる仲沢川の水源は、加波連山の一つ「老婆(ばば)ヶ峰」と呼ばれるところにあります。

 昔のことですが、老いて弱くなった年寄りを、この峰に捨てたという伝説が残っています。このことを、「大曽根雑記」(岡村安久著―加波山道―)は次のように記しています。

 「物語によると、息子は家族が寝静まるのを待って、縁側の戸をはずして、老婆を背負って山に向かったという。その頃、この「老婆ヶ峰」まで登る人はいないのだから、ここまで辿り行く谷間の道は、老木が鬱蒼と繁っていて、月の光は届かず、まるで地獄への道のように暗かったと思われる。その暗い道を老婆とはいえ背負い上げるのだから、道端の石におろして休むこともあったと思う。その時、この母と子はどんな話をしたのだろうか。
 「老婆ヶ峰」近くの道は険しく、右も左もそそり立つような絶壁で、下を覗くと奈落の底のような深い谷である。その底を、岩に砕け散る沢水の白さのみが凄みを見せて流れていた。背負っていく人も、背負われていく人も、どんな気持ちでこの道を進んだのだろうか。・・・・・・」と。


文:舘野義久(大和村教育委員)

取材協力
岡村安久さん(大曽根)
プリンタ出力用画面


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